―自室―
[XB-109が整えてくれた昔の部屋は、
空調の音も気になるほどではなく>>32.
10年前に出て行った時のままのように思われた。]
……懐かしいなあ。
[5歳の少女を引き取った時、何を与えるべきか分からなかった博士は
女の子用の子ども部屋をまるごと一つ、という無茶な注文をした。
おかげで、小さい頃はやたらファンシーな物に囲まれたが、
長じてからは殺風景なもの。
ベッドとクローゼットとソファ、あとは本棚と、
量子コンピュータのコンソール機能つきライティング・デスクくらいだ。
擬似風景の投影された窓際には、機械仕掛けの青い鳥の鳥籠が揺れる。
一つだけ記憶と違う、薄紅色の薔薇のホログラム>>20に
小さく微笑んだ時、来客音が鳴った>>114]