― パン屋の前 ―[からん、ドアベルの音が店を去り行く男の背を押す。足が動いていた頃よりも、動きは緩慢。右手の松葉杖を前に出して、一歩。また一歩。その動きは、大分手馴れているように見える筈だ。] あ――…っと、悪い。[>>112 そしてまた一歩を踏み出した時に、男の肩が、横を抜けようとした青年の肩にぶつかる。振り返り謝罪の声をかけたが、彼の耳には届いただろうか*]