―午后のパン屋―
[きっと、9年前にシモンに別れを告げられていたらオットーは泣いた。行かないでくれとねだったかもしれない。
(>>0:96)大きくなったとシモンは言ったけれどそんな事はないと思う。(>>0:113)だって彼が自分の頭を撫でてくれた時に涙が一粒零れ落ちて白いエプロンに小さな染みを作ったんだった。ちょうど顔を俯かせていたから泣いた事に気がついていないと良い、良い年して情けない。
自分を心配して大丈夫だと言った事は分かっていたけれど違うだろと反論する。]
そういう問題じゃないだろ…。治らない傷だってあるんだから。
[涙の訳は分からなかった。シモンに再び出会えた事を素直に喜べばいい。シモンがヤコブ達と会話する姿を見て満足すれば良い。
なのに長い間抱えていた不安は引かなかった。暫くの間とシモンは言ったから村を出て行ってしまうに違いない。
自分が子供でなかったなら…、大人をやれていたならシモンの抱えている事情を聞けたかもしれないのに。]