[初めはただ、社交の場で挨拶を交わしただけだった。
10かそこらだったので、親について回って決まり文句を言うくらいしか出来なかったけれど、どこか異国を思わせるその顔立ちは印象に残っていた。
"奥様の本当の子ではない""異国の女に産ませたとか"そんな噂が、大人たちの口から囁かれるのも聞こえてはきたけれど]
[そのうち彼が兵役で呼ばれたこと、そこで活躍して国軍に加わったことも噂で知った。
その頃には親たちも、自分を励ますためにその名を出したのだ。
兵役で活躍すれば、ベリアンどののように出世できるかもしれない。
自身に課された義務には相応の見返りもあると教えるように、その話は度々聞かされた]