(旧ロー・シェン邸か……。
わたしは家からちょっと離れてたから来る機会はなかったけど、何度かここに来たことあるって子は居たなぁ。
わたしも一度観光に行ってみたいって思ってたけど……こんな形で来るなんて思ってなかったよ。)
『すごく近くもうんと離れてもない場所って、同じ市内でも案外行かないもんだからねー。
そんで、ここに来たことある子って?』
(うん……さっちゃんって子なんだけどね。
小学生の低学年の頃とか、よく遊んでた。
今の暮らしになってからは……あまり喋らなくなっちゃったけど、でもあの子だけは、わたしのこと最後まで“しぃちゃん”って呼んでた。)
『仲が良かったんだ。』
(そうだね、ともだち……かな。
……今どうしてるかなぁ。)
[思い返すは、ここと馴染みのあるらしい“ともだち”。
10歳になってからは自分から遠ざけてきた>>15存在を、友と呼んでいいのかわからず、曖昧な表現になったけれど。
少しだけ中の様子を見てみようかと、ベンチを立って一階廊下北西の扉へ足を向けた**]