[排出水蒸気を浮力の助けとして、カルカリアス号は数年ぶりにその巨体を持ち上げる。
まずは左右に断崖の迫るファレーズ飛行場を慎重に抜けたところで歓声があがった。
「オレたちだってやればできる」ことの確認だろうが、こうした手応えは大切だ。
開けた空間に出るとカルカリアス号は高度を上げてゆく。
光線対策リフレクター塗装の船体は地上に落ちる影を打ち消した。]
さすが弩級戦艦、安定度が違う。
[ガレオン船では風の影響を受け過ぎる強風域を超え、雪嶺を下に見下ろす。
ダーフィトは艦橋に立ち、煤でレンズを焦がした双眼鏡を天頂に向けた。]