[少女の周りに繁茂した蔦には注意を払っていなかった。
吸血蔦の罠に(温泉に常駐する愉快な一団にも)一度も遭遇していなかったのもあるし、城のバルコニーに蔦が絡んでいても普通は異常と思わない。――
だから、蔓が素早く伸び、鞭のようにしなるのを見てやっと、それが少女を守る要塞であったと気付いた。]
!!
[少女の喉首まであとほんの掌一つ分、あと少しで手が触れるというところで、強かに巻き付いた蔦に絡め取られ。
ぐいと力任せに引かれて、反動で振り子のように揺れるまま、逆さ吊りにされてしまった。
その上、首元にひたりと光る刃が擬せられては。
歯噛みするしかない。]