― 文字と負傷兵 ―
これが、あ、で
これが、い、だな……これが……
[この村にやってきた負傷兵である青年
傷を癒す合間に、文字でも覚えてみないか。と
声を掛けたのは――きっと
このまま怪我が治ったら
戦場に行ってしまうのを止めたいな、と
漠然と思ったからでもあった
何もできぬというのなら
今がチャンスだ何かを学べ
人間は考える葦であるとどっかの偉い人が言っていた
なんて無駄に熱血神父みたいなことを言って
じーさんが昔、自分やフリーデルにしてくれた様に
チョークと手で持てるサイズの黒板を
渡して、怪我が治るまでの間
フリーデルと2人で彼に文字を教えた結果――]