[軋む男の唇が、確かに言い掛けた言葉。それは――覚えていたのは、仮面越しに垣間見た顔だけではないのだと知らしめた] ――…ね。だから、言ったでしょう。[冷めた嗤いが、薄らと開く唇から紡がれる] 供も連れず、独りで夜に出歩く素性の知れない女を誘うなんて。 一夜限りの禍を期待するような、慎みの足りない女か―― そうでなければ、自分自身が禍なのよ。