シモン……?
[それから告げられた名前を、脳内から探す。
南町で飲んだ兵士。年単位で前というが、南というなら夏頃だ。こうした時系列の整理にもこの渡り鳥は悪くない。]
――ああ、あの。
[思い至ったのは、丁度当たりの進攻にと、一帯の地形、村や街の状況、気候の様子等々を、自身の見聞きでまとめたものを話した兵士。
それだけでなく旅話や愚痴や世間話などで、良い夜を過ごした記憶がある。]
無事、というわけではなさそうだが、無事だったのか。
こんなところで会うとは、再会をゆっくり喜べないのが残念だ。
落ち着いたら、また一杯やろう。
[そう言って笑むのは、一度だけ。]