― 銀嵐と男にまつわる話 ―
[起きるわけはないだろうと、いじめっ子に対する冗談めかした悪意を即興で歌ってみたら、その歌になぞらえいじめっ子が殺され、挙句少年は誘拐された。
後に救出された少年は、悪意は口にするまいと、固く固く心に誓った。
少年の一大決心は偏屈にすぎる学者から、一番の理解者と捉えられたのだろう、独占欲から耳を焼かれる結果となってしまった。
成長した少年は、悪意も好意も口にすまいと固く口噤むことにした。何が悪かったのか、何が女を惹きつけたのか、その決心は勝手な解釈で好意を押し付けられる事になってしまった。
一方的な女と少年の関係は、女の当て付けのような最期で幕を下ろした。
そんな経験があったからだろうか、男は感情を発するという事に酷く抵抗を覚えていた。]