トール。
[ それは、テンガを離れ、追ってきたトールと再会した直後のこと ]
血の匂いがするぞ?どこで寄り道して来た?
[ 国境を越え、己同様、政情の不安定な場所ばかりを通って来たはずだから、何事もなく通り抜けるとはいかなかったのは当然だが ]
結構深い傷だな?まったく、俺の知らぬうちにそんな傷を付けられるとは...
[ むう、と不機嫌が顔に出るのは、相手がこの男だからだ、と自覚している。共に戦う時にも大方満身創痍になるのが常の戦馬鹿といっていい相手に、無駄な物言いとは解っている筈なのに、だ ]
お前は俺の物なのだから、多少は自重しろ、馬鹿者。
[ 自分の目の届かぬ場所で、彼が命を落とす様な事はきっと無い。
それも知っていて、尚、その傷痕が残るのを厭うのは...恐らく、それが「自分の知らぬ傷」だからだ ]