[一方で、ウルケルの動きにも刮目すべきがあった。
巡洋艦の守りがひとつ落され、水雷艇が装填に戻った間隙を縫って戦艦列の最後尾へとウルケルの牙が襲いかかったのだ。>>28
戦艦の装甲を抜くのは容易ではないとはいえ、無敵ではなかった。
狙い所さえ心得ていれば。
そして、この攻撃を指揮した男は、戦場という波を読むことができた。
ゲオルグが育てたウルケルの魂を継ぐ者。
的確に浴びせられる砲撃が舵を破壊し、水雷が喫水下に穴を開ければ、戦艦といえども鉄の塊、撃沈は免れない。
軍医上がりの副艦長シロウの名はいまだアレクトールの耳には届いていないが、その手痛さは刻まれることとなる。]