[兵を返した後も、机に片肘ついたまま動けずに居た。乗せた額を支える拳が、じっとりと汗を滲ませる。敵国の指示の元とはいえ、戦の火種を投げ込んだ原因が、余りに近いところにあった。ついさっきまで通信機から届いていた声はごく普通で――いや、だからこそ臓腑がひっくり返るような心地なのだ。普通で居られたのだろうか? 人の未来が一太刀で消える戦場を作り出すに加担して?背に怒りとも恐怖とも嫌悪ともつかぬ震えが走る。それを抑えようと、硬い木の机へと拳を叩きつけた。]