[馬は、リンザールの領で産したものだった。ユリハルシラ家に戻った頃、お使いでリンザール領を訪れたことがある。慣れぬ世界に入った弟を、友好的な家に紹介しようという思惑があったのかもしれないし、リンザール家の当主も放浪生活が長かったから、気が合うと思われたのかもしれない。そんな父や兄の思惑はともかく、リンザール家の騎馬弓兵はすごい、という話だけを聞いて、わくわくしながら訪れたのだった。手土産は、新しい揚水機構の図面と、季節の果物だった。]