──昔の話──[焦げた臭いと咽かえる血の臭い。家を支えていた木材の爆ぜる音と時折聞こえるか細いうめき声。あちらこちらからあがる硝煙と煤けた家々。][そこはかつての生まれ故郷のあった場所。国の南に位置する生まれ故郷は国の中でも安定した日光のある場所でとりわけ葡萄の栽培が盛んであった。][だが、目の前に広がる戦火はそんな以前の姿など想像の余地を与えないほどに全てのものを奪っていった。][故郷へ錦を飾らんと、参謀就任の報告をしようと思っていたほんの数日後の話であった。]