いきなりナイフなんぞ、投げんなよっ!
あぶねぇだろ。
とっさに投げ返しかけたぞ。
[返そうとしたナイフの代わりに、言の葉を投げる。
壁に刺さったナイフの様子から、投擲に手を抜いた様子は見えない。
つまり『致命箇所を避け』、威力は全力で投げた……ということだろう。腕に自信があるからこそ、といったところか。
溜息を吐くと「おっさん」呼びした訳を、素直に謝罪する代わりに告げた]
あー……軍服なんて着込んでるの見かけたことあったから、
男に扱われたい方かと思ってたんだわ。
[ローレルとの会話内容もあり、意識が渡り歩く際のものになっていたというのは否めない。旅の道中、性別不明の者にあったら表上は『男』と扱う方が、問題は少ない。たまにこんな風に、素で怒りをぶつけられることもあるが、それはそれ、これはこれ、である。
ふっと、記憶に掠めるのは、どこかで最近すれ違った。纏う緑と金髪が印象的な旅人のこと。その旅人がここに混じっているとは、まだ男は知らず]