[カレルの卒業に遡ること1年。
トゥーレーヌ侯爵家に新しい当主が立ったという報は、
帝国上流社会を賑わせた。
侯爵家が年若き当主を戴くことを
対立する者たちは大いに歓迎する。
その中に、ブラオクヴェレ家の支援者たちも含まれていた。
彼らは侯爵家の新当主を未だ無知な孺子と侮り、
ここぞとばかりに追い落としを企てた。
だが彼らの目論見は外れ、企てはことごとく潰える。
加担した者たちは次々と閑職に追いやられた。
ブラオクヴェレ家自身は企てに加わわらなかったが、
支援者たちが凋落した影響を免れ得なかった。
結果、その一人息子は辺境の戦地を渡り歩くこととなる。
公国との戦端が開かれれば、当然のように最前線へと赴いた。
武勲を立て、帝国に忠心を示し、政界に野心無しと見せる。
全ては、"家"のため。]