― ありうるかもしれない未来の話 ―
「………そうか、もう、向こうに行く季節になったか」
[軒先で出会った近所の老夫婦との世間話の最中、女の子は頷いてみせた。
――また、この季節がきた。
老夫婦にとっては一人娘を、人ならざる者が関わった騒動で喪った季節であり、
女の子にとっては、さながら冬ごもりのように、
街から離れた遠くの村で過ごす季節。
――風花の村。
件の騒動があった村でもあり、女の子がこれから向かう村でもある。
二つが一緒なのは偶然ではない。
そもそも――女の子が、老夫婦の家に飾ってある絵を見初めたのが、
彼女が風花の村に行ってみたいと思うようになった最初の、きっかけ。
丁寧な筆致の木炭デッサンで描かれた、図書館の絵]