[突然にやってきて挨拶をするなり、「こんにちは、死ね!」と襲ってきた男。彼は何時だったかに蔦から救出した男、その人に他ならなかった。
小石が蹴り飛ばされるようにあっさりと金糸雀の体は宙を舞う。
金糸雀はスローモーションで流れる時の中、小さく歯噛みをする。ああ、ヒトの姿を取ることができれば、と。
親以外の吸血鬼と殆ど会ったことがなかった少女。
飢えたことがなかった少女。
彼女はこの壮絶な数刻の間に、確かに学習をしていた。
ヒトを相手にするのと同じではいけない、持てる魔法全てを使わねば、未だ青い彼女に勝ち目はないのだと。そしてそれら魔法は、この姿では使いようがないのだ。]
ぴぃ、
[一声啼いて、金糸雀の体は窓ガラスを割って建物の外へと落下する。さあ、相手は追いかけてくるかどうか。それとも友人の相手で手が塞がってしまっているか。
落ちた先は、"中庭"。
また彼女は振り出しへと。]