[「もうちょっと」と強請ったのは、頬の火照りと胸の動悸が収まってから顔を上げるつもりだったからなのだけれど。(>>86)呼応するように抱き寄せる力が強められ、よく知った掌とは異なる感触が髪に降りてくる。──それが何なのか察してしまえば、ますます顔を上げづらくなってしまった。“特別な感情”をかたちにしてくれた嬉しさと、どう返せばいいのか見当もつかないもどかしさがないまぜになって、小さな溜息とともに熱くなった頬を彼の胸に擦り寄せた。]