ーある領主と1人の男>>73ー
[彼が平凡でないことなどとっくの昔に気づいている。
それでも友であることをやめないのだから察してほしいものだ。
その友が、領主の座を譲ると言った。その理由。
考えれば大凡察することはできるというもの。]
(黙っていなくなるつもりだな?あんにゃろ)
[何も相談せずに勝手に決めるところは変わっていない。
数十年前の、あの日と同じだ。]
(しかしどうしてこうもまぁ……こういう時に限り案件が増えるんだか)
[レディ・イングリッドがキナ臭い動きをしている。
見張り報じよと国の中央からの命令を受けたのと此の館への招待状が来たのは同時。彼女が部屋へと引っ込んだのを見れば、窓に近寄りコン、コンとノックして外に合図。]
(間に合えばよいのだがねぇ)
[そんなことを考えていれば、旧友にワインを勧められた、かもしれない。]