― 天龍滝 ―
[ウェルシュが本性顕現し、援護を請うたのには訳がある。
一つは、人型よりも本来の姿の方が妖力の放出量が多いこと。
もう一つは、その上で”全力を出さないようにする”ためである。
妖ゆえにウェルシュとて力を蓄えるために他を襲う本能は持ち合わせている。
普段は人型でいることでそれを抑え込んでいるが、本来の姿となってしまえばその限りではない。
過去にも風龍峡の調査の際、蜘蛛の姿になったことで暴走したことがあった。
奇しくも天龍滝を目前にした場所でのことである]
[ウェルシュにとって全力を出すということは、本性顕現した上で本能すら解放してしまうこと。
流石にここでそれをしてしまうわけにはいかない。
そのための援護要請、というわけだ。
前は今ほどの力は持っていなかったし、調査隊も人数が多かったのもあり鎮めてもらえたが、異変の元凶を前にして皆に援護以上の負担をかけるわけにはいかない、という理性はきちんと残っていた]