―歩きながら―
[俯きながら、エレオノーレは言います。]
『コンスタンツェ、コンスタンツェ。お願いがあるの。』
何でも聞くわ、エレオノーレ。
『昨夜のこと、絶対に、フランツには言わないで。彼にだけは言わないでいて。お願い、コンスタンツェ。私、どうしても知られたくないの……。』
……分かったわ、エレオノーレ。私、誰にも言わない。
あのことは私と、貴女だけの秘密よ、エレオノーレ。だから安心していいの。
あなたは、何も、悪くない……。
[頭上で高らかとなった教会の鐘が、あの子の魂を送り出し、そして、泣きじゃくるエレオノーレの声を、包み込むように隠してしまいました。]