[男の腕の中抱えられた少女は、またこちらを警戒したろうか。 傷を負っているらしい当の男に雪崩からの救出を頼むつもりは毛頭なかったが、他を探すよりも、第二波のほうが早かった。 舌打ちしたくなるのを抑え込み、改めて彼と少女へ向き直る。]……お聞きのとおりです。巻き込まれた人もいる。これ以上の被害は避けたい。無事なら、ここを離れないで。[目の前の男は、すぐさまに思い出すには雰囲気が変わっていて、今この状況では既知とは思い至れない。 ただ、ひとりでも無事な人間として、頭の中に刷り込んだ。]