[白い肩からついと舞いあがる黒蝶は、凶兆のごとく闇に溶け消えた。振り返る男の手に、閃くもまた白刃。瞠られた双眸は、半年前と変わらず蒼灰を湛え――唯そこに浮かぶ感情だけが、見知らぬ色をはっきりと映し出す] ……覚えて、いたのね。[何故、と問われて、苦笑混じりの囁きが滑り落ちた。胸に刺した棘の痕が、じくりと疼く思いで]