― 花屋『Florence』 ―
[店に着くと、とりあえず血の付いた上着を脱いで、カウンターの裏へと放り投げる。
膝にも腿にも、血がついていたが、ひとまずそれはそのままに、Tシャツは新しいものに着替え、気分だけはさっぱりしておいた。
――その僅かな血の匂いが、ソマリではない"何か"を起こすかもしれないこと……には気付ける筈もなく。
そして、アレクシスが来た際に、危害は加えませんよと棚においた鋏>>3:338を手に、栽培施設へと入っていった。
循環ポンプの電源を入れ、水をやる。
一日水が切れただけで鮮度を失う花もいたため、取り扱いは慎重に。
そして、目的の花を、鋏で切っていった。
まだアリーセたちの花も作れていない。
それなのに……マーティンもセルウィンも。
……手向けの花ばかりが増えてゆく事実に、……でもどうすることも出来ない事実に、はぁっと盛大に息を吐き出した。
昇華されずにいる思いを、少しでも吐き出すように。]