[連れてこられた人間は、どうやら元商人だったようだ。
ハールトから離れた場所を歩いていたところを捕獲されたらしい。
べったりと平伏した背中から、冷や汗が床にまで滴っている。]
どうした。俺がおまえを取って食うように見えるか?
良いから話せ。話次第では優遇してやる。
[震える人間を落ち着かせ、なだめすかして話をさせる。
その内容は、次のようなものだった。
王国軍が来たと聞いて一人で港まで逃げたけれども、
船には入れてもらえず別の場所へいけと指示された。
仕方なく移動しようとしたとき、別の集団がやってきて、
船に乗せてくれるよう大きな声で主張しだした。
彼らといれば、自分も船に乗れるかもしれない。
そう思って近づこうとしたとき、いきなり船から矢が降ってきて彼らを殺したので、自分は怖くなって港と反対側へ逃げ出した。
要約すればそんな趣旨のこと。]