[通信をしつつ、ふと少尉から聞いた話を思い出す。
父親が工廠の技術者で、ヴィスマルクの基本設計に関わった。
そしてファベルという姓。確か、どこかで…。]
(あ、もしかして、クレメンス・ファベル博士?)
[そうだ思い出した。というか、なんで思い出せなかったのか。
6代前の工廠長だった人で…工作学校を出た後、他国の工科大に留学して博士号を取得し、工廠長に就任した後は数々の艦の設計に関わったていたらしい。
また、最終的には大将を追贈されたとも聞く。
そして何より、このヴィスマルク建造計画の初代主任だ。
計画が始まってから10年。初期の構想からだいぶ変わってしまったものの、基本的な構造やコンセプトは変わっていない。
速くて、硬くて、大火力の戦艦。こう表現すると馬鹿らしいが、それを体現した艦がここにある。
…それを実現させる為の最初の一歩を踏み出した人だ。この艦の設計に関わった技術者で知らない人はいないだろう。]