[再起動中のアンドロイドが零した囁きは遠く、音として耳には伝わらない。ただ空気が、ほのかに揺らぐ温度が、秘め事のかそけき気配が、冷えた部屋の重苦しい澱みを揺さぶるのを感じるのみ。五年の間凍り付いていた時間が、ひとつの歯車を得て動き出す。その最初の軋みを聞いた気がして、部屋の壁に寄って、成り行きを見守ることにした**]