[やはり帰った方が良いのだろうか、と瓦礫の裂け目から身を潜らせ、壁を伝い歩くが、どうにも足場が悪いようだ。
カラリカラリと乾いた音がする何かを、先から何度か蹴った。]
あいたっ……。
[入り口から差す光では足元は見えず、何度目かに細長いそれに完全に足を取られ躓き、床に手をついた。
鈍い痛みが左手に滲む。錆びた棒の様な物に手を置いた様だ。
重みのあるそれを持ち上げると、牙にも見える切っ先が鈍く光を反射した。]
これは……? バール?
[それは全長100cm近くもある鉄挺だった。
普段なら持ち帰ることを考えるはずもないのだが、先程足に瓦礫が崩れ落ちた時、足に僅かな痛みを感じていたのだ。
杖代わりに使えるかしら、と、右手に鉄挺を持った。]