――→第2エリアへ――
[さて、点検が一段落つけば、他を見て回ろうかと、ふらりと第2エリアの方へ向かう。
クリーム色の毛玉は女の左肩でその毛を揺らす。
窓の外に広がるのは、インクを垂らしたような紺色にきらきらと砂のような星をちりばめた景色。
こればかりは貨物や機関のエリアでは見ることは叶わない。
中継惑星の人工的な煌びやかさはもう遠く。ただ静かな海が広がっている。
女にとっては見慣れた景色だから、今は別段どうこうということはないが。
乗ったばかりの頃は目を輝かせて外を見ていたと思う。
あの頃は、感情の出し方が今よりももっと薄かったにも関わらず、だ。
と、目線の先に歩いてくる人影が見えた。
随分ご立腹であるらしいその人は、同じ整備士の同僚であった。
女は人の名前や顔を覚えるのが苦手だ。…というより周りのことに対して無関心であり無頓着であった。
乗員の名前もあまり把握できていないものの…
さすがに、同じ仕事の同僚ぐらいは把握できていた。
名前を呼んで声をかけると、同僚はぱっと顔を明るくして駆けてきた。]
おはようっす。
……何かあったんっすか?
[聞いてくれよ!とすごい勢いで手を握られる。それには動じず飄々と、半ばあきれも入りつつ、続きを促した。
聞けば、乗客とSilver Mary号が可愛いか可愛くないかで言い争いをしたらしい>>16>>30。
うわ、何をやっているんだこの人は…と呆れがだんだん大きくなっていく。
同僚も可愛くないと言われてつい熱くなってしまったらしいが。]