[―――それは、最後の意地だった。
手に取った苺を歯で挟めば、両手をゲルトさんの頬に添えて…
怖さでも、不安でもない。
けれど震える手が、口が…――苺から、滴が零れ出す]
ぁ――、………あぅ…
[形を保ったままの苺が、ゲルトさんとボクの間で潰れて行って
零さまいとすればするほど、喉の奥の方へと流れ込んでくる。
…いつの間にか、飴玉ほどの大きさになっていたその欠片を。
不器用に、ようやくゲルトさんの隙間へと押し込んで――]
…ぁ……あぅうう…!
どっ、どうですか!ボクだってこれくらいっ!
……さあ、ネ…ネクタイを渡すがいいですっ…!
[軽くむせながら、こんなみっともない表情を見せたくなくて
抱き着くように、胸に顔をうずめながら――そんな事を。]