― バルコニー ― やあ。 そこに居ったがか。[男は扉の影から姿を表し、寄り添う二人に明るい声をかけた。ただし、両眼はギラギラと赤光を放ち、表情の明朗さにまるでそぐわない。見る影もなく汚れ、負傷した跡と思しい血が身体のあちこちに付着していた。ゆらりと数歩近付いたかと思うと、深呼吸して深々と息を吸い込む。] やっぱし、ええ匂いじゃのう。 なあ。[ニカリと笑って] 血ぃ吸わせてぇな。[予備動作もなしに、シルキー目がかけて飛びかかった。]