…少し、休みましょうか。
[あの頃に戻りたい。そんなことをふと思ってしまうような気分の中で仕事をしても、きっとミスをしてしまう。
そう考えてアテもなく歩いていると、いつの間にか雲で出来た階段のところまで来ていた。
――天使長になるために、自分には試験があった。
1人で人間界に行き、数日間留まって人間のことをより深く知ること。
一見すれば試験とは呼べない簡単なものかもしれないが、何せシルキーは無垢であり、そして無知だった。
無知故に理想しか持てなかった者がたった1人、欲望や穢さに塗れる世界に降りればどうなるか。
――人間の欲望の餌食になるだけだ。]
あら、……シグルド?
[聞こえてくるのは主の御業を喜ぶ歌のハミング。
吸い寄せられるように近付き、そこで何やら編み物をしている彼を見つけて名前を呼んだ]