― スラム街 ―
[人影は屋根の上を跳んでいく>>101。
それを追い掛けるのは難しくはなかったが、こちらも特段気配を消したりはしなかったから、気付かれてはいたのだろう。
しばらく後にその人物は足を止め、屋根の縁からこちらを見下ろした>>102]
ああ……いや、ちょっとばかし道に迷ったみてぇでな。
ここの住人か通い慣れてる奴に、訊ねてみようかと思ったんだがね。
[如何にもおのぼりさんのような口調で訊ねる。
吹き抜ける風に、腰からはみ出した尾羽がわさわさと揺れた。
間近で見た相手には、やはり獣の耳や尾が生えていて、瞬きつつもそれらの様子を眺めていた*]