― 夕食前 ―
[夢現、>>51ふんわり誰かの体温を孕んだ暖かな何かに包まれた事と、背を撫でる優しい掌を感じた。
――あぁ、「彼」じゃない。
自分の身を包んだ布地に鼻を埋めてみても、其処に在るのは自分の匂いと、微かに移る…――誰だっただろう?真白いイメージ…
其の侭記憶を馳せればルートヴィヒが浮かんだだろう、けれど、心の底から一番に望むひとでは無い事だけ知れば、ぺたり耳を伏せて拗ねもぞもぞブランケットに潜り込み、胎児の様に己が身を抱き締めた。
記憶の中にしか居ない「彼」が此処に居る筈も無い事くらい、頭では、ほんとは判っている。
それでも逢いたいと願わずには居られず、現実を思い知る度こうして感情を持て余す。
ブランケットの中に潜り込んでしまえば滲んだ涙は誰にも見えず、丸まって小さく鼻を啜る様は、傍目には、ただ寒かったように見えただろう。*]