[やがて目の当たりにしたのは、黒衣を纏う人影に圧し掛かられ、地にのたうつ護衛長の姿>>73彼の生への歓喜と、獣じみた苦悶への絶望が、同時に込み上げた] ―― やめ、て…… ディークを、離して…ッ! 傷付けないで![懇願に等しい悲痛な叫びと裏腹に、奔る脚は止まらず、掌中の白刃が閃く。同じ血親を持つチャイルドを、身体は“追っ手”とは認識しなかった。開けた距離から振るわれた切っ先は、斬り裂く空気を冷気の奔流に変じ、真っ直ぐ小柄な人影へと]