やはり、あれを使うか。
[手を伸ばし、中空から転移させて取り出したのは笏だった。
装飾の少ないそれは、この世界のものではない黒い鉱石を削り出して作られた、腕ほどの長さのもの。
笏の先端には七つの宝玉が嵌められている。それらひとつひとつの表面は灰色に鈍く輝き、じっと見つめれば内部が不規則に蠢くようにも見えただろう。]
カナン・ディ=ラーグの名により命ず
形無く色無く声無き七よ 疾く参れ
[詠唱に応じて宝玉が生き物の目のように輝き、それぞれ細く白い霧を吐き出した。
やがてそれは、ふ…、ふ…、と一筋ずつ崖の上へ流れ凝っていく。
その数、七つ。]