―城の一室(客間)―
[状況を全て理解していながら、身体は一切の挙動を拒絶した]
―――――――…ぐっ。
[まず背後から心臓を一突き、壁より飛び出した茨に貫かれる。
赤い血の雨を降らせながら、見開かれた空色。ふわり、人形のように男の身体は突き上げられる。
腕を、肩を、体幹を、足を、四方より茨は突き刺すが、
男は抵抗も、身じろぎ一つできずに。
虚ろな瞳は見開かれたまま、何処にもない空を映している。
やがてゆっくりと、その身は床へ降ろされる。茨は霧のように溶けて消え去り、後には血溜まりの中に横たわる男だけが残された。
感覚など麻痺してしまったようなのに、
傷を負っていない筈の眼の奥だけが気が狂う程に痛い。
痛みを胸に刻みながら、男は静かに、眼を閉じた*]