[アルビンは興奮した様に頬を高揚させてオットーへと振り返る。
「どの動物よりも山を森を早く駆けるんだ。オットーは知ってた?」
オットーは遠くに見える狼にどの様な反応を示しただろう。
アルビンと同様に狼に見蕩れたか、それとも野生の生き物の姿に怯えたか。
(そもそも、アルビンはこの出来事を忘れてしまっている。
この日見た狼が現実か夢か定かではない――。)
オットーがどの様な反応を示しても、アルビンは気にする余裕は無かった。
声を弾ませて話しを続けただろう。
「あれはね、森の王。世界中で一番に気高い生き物なんだよ。」]