あんた、ここに勤めてるのか?
[薄暗い照明の中、記章はよく見えなかった。>>24
しばらくはそんな風に、ちょっとした自己紹介や世間話もあったかもしれないが。
勧められるままに杯を重ねれば、最後のあたりは、まともな話が出来ていたとは思えない。
元からの笑い上戸も手伝って、周囲の客には申し訳ないような笑い声を何度も上げてしまったことと思う。
そういえばあの男、こちらには妙に強い酒を勧めてきて。
一緒に騒ぎながらも、自分は香りや味を自然と楽しんでいるようにも見えた。狡い。
それほど歳を重ねているようには見えないのに。
気さくで話しやすい雰囲気とは裏腹に、
見た目よりさらに大人びた――違う……長く歩いてきた者のような印象を、受けることもあった。]