―少し前のパン屋―
ほんと、遅いんだから。
僕は随分とくたびれたよ。
[(>>86)肩をすくめて苦笑を浮かべる相手にまたも悪態をつきながら、店内へと招き入れる。
焼きたてのパンを差し出した。金を払おうとするのを断る。
パンを片手に迷った素振りを見せるシモンをじっと見つめていた。
口を開けてパンを齧るシモンに向けられる強い眼差し。心無しか表情も強ばっている。]
……当たり前だろ?
不味いなんて言ったらシモンの味覚を疑うよ。
[美味しいと言われて口から突いて出るのは変わらず悪態だったが。
それよりも先にいつの間にか詰めていた息を吐き出した。]