― 街角で ―黎明に、明星(あかぼし)二つ。星に集いし者たちの、争う果てに星落つる。明ける空に、残りしものは……[”暁天はかく語りき”そう題されたバラッドを歌い終えた吟遊詩人に、パラパラと拍手が送られている。金を投げ入れ満足げに立ち去る客らの中に、身じろがず座り続ける青年がいた。髪を布で纏めたその姿は、旅の商人のようであろう。概ねの人々が去り、吟遊詩人も片付けて帰ろうかと楽器を手に俯く中に、青年が朗らかに声を掛けた。]