若しかしたら、卿に嫉妬でも覚えていたのかも知れないな。
[浮かべたのは微かな苦笑と、亡くした父と彼の卿を思い出すそれだ]
同じ貴族の家柄、年も近い。
それなりに交友もあったろう。ライバルとしての対抗心も十分。
然し己を上回る才覚。だがそれは認めて、やがては王国の柱と。
そんな考えを抱いていたから、勝手に裏切られた感覚に陥った。と。
折角の、己よりも秀でた腕があるのにと、卿の心を理解できずに。
…我が父上は、あれで意外と人間臭さがあったと。
彼の卿を亡くしてから、なんとなくそんな想像が浮かんだよ。