『あれは、どうしようもない意地張りでな』
『まあ、母親似……なんだが』
『若様のおかげで、大分柔らかくなったが……正直、色々と心配でな』
[そんな何気ない助言の、更についでのようにリカルドが零したのは、彼の病が知れる少し前の事]
『これからも、色々と世話をかけるやも知れんが……何かやらかすようなら、遠慮なく叱ってやってくれ』
『さすがに、主君にはこれは頼めんのでな』
[冗談めかした口調で綴られる願い、その所以は語られる事はなかったが。
程なく病に伏した彼の死後、早速起きた約五日間の行方不明事件と、その後も何かと起こした喧嘩騒ぎやら何やらは、それを十分に示すものだった──かも、知れない。**]