[それから、混沌を懐く澄んだ夜のようなゾフィの瞳>>98に、
一瞬だけふっと見入り。何かを堪えるように眉を寄せた。
“ありがとう”という単語の意味を、ある程度理解している白い犬は
何もしていないのに褒められたと勘違いして、
「ワン!」と喜び答え。屈みこんで距離の近くなった
大好きな人に、しっぽを振ってじゃれつこうとする]
(―――――… 月灯りに浮かぶ横顔、夜に沈む瞳 )
[ふと脳裏を過った記憶の中の面影と、重ねたわけではない。
ただ、ゾフィの瞳の奥の夜闇に、
記憶の中の瞳に浮かんでいた “覚悟”の色と…
近いような、”何か”を感じて。
小さな子どもの頃のように、鋭く冷たい不安の爪先に、
心臓を引掻かれたような錯覚を覚えたから]