― 過日 ―
[ プラメージ王国の国王代理から賜った石笛を、男は当初、ただ仕舞い込んでいた。
何しろ楽器になど触れたことがないし、教えてくれる者もいない。黒曜石の艶めいた美しさだけは理解できたが、飾って愛でるというのも男の気風ではなかった。 ]
足の悪い当主?
[ 新元首への挨拶の答礼の使者も、叔父の動向が怪しかったため、結局他の者に任せることになり、その使者が戻った後のこと。
王国の動静を知るために、使者となった男から話を聞き、ついでのように話された王国での歓迎の宴の様子に、その話は出た。
王国の貴族の、正確には当主の跡取り息子ということらしいが、明らかに生まれつき足が悪いのだろうと思える者がいたという。 ]