[ローランドから借り受けたスカーフを、弩の矢に括りつけた。
布の間に蓄えられた香りは先ほどよりもよほど濃密で、香りの強さだけで当てられてしまいそうだ。
長くたなびく布は矢の飛翔を邪魔するだろうが、この距離ならば問題はない。
これで"届かせる"ことは可能だったが、未だ足りない。
純白の一角獣の足元から、幾筋もの水が重力に逆らって立ちあがっていた。
鎌首を持ち上げうねる姿は、神獣を守る水龍のよう。
単純に射るだけでは、容易に叩き落とされてしまうだろう。
折しも、ユーリエが放った銃弾が、闇の雲となって広がったところ。>>91]