― テラスにて ―
[優美な馬車を翼ある眷属に先導させ、道を開かせる。
訪れた麗しき貴婦人に、こちらも腰を折って応えた。>>88]
ご機嫌麗しゅう、ミリアム嬢。
あなたの美しさに、この無骨な城も華やぐようです。
[彼女が作り出す陶磁器ほどに白い繊手を求め、許されれば指の背に唇のひとつも落とそう。
宙から取り出された白磁>>92は、赤い満月の光を受けて、ほんのりと淡く染まっている。]
貴方のお好みは、あのようなものではないでしょう。
佳いものを取ってありますよ。
是非。
[震え上がった鳥籠の住人には目もくれず、手を二度打つ。
眷属に連れられてきたのは、まだ声変わり前の侍童だった。]